この世とあの世の境界。京都にはそんな境界がいくつかあります。その1つが「六道の辻(ろくどう、りくどうのつじ」です。ピンときた方はそう。仏教における、人々が迷い苦しみ流転する6つの世界「六道」からその名が来ています。
この辺りは鳥辺野(とりべの)という地域で、平安時代以前より京の埋葬地の1つでした。※現在の鳥辺野はもう少し東の方へ移っています。死者を弔う場所、つまり生と死の境界だったんですね。そこには450年以上続く老舗の中の老舗、「みなとや 幽霊子育飴本舗」があります。
今のお話とお店の名前、ぞくっとする方も多いかもしれませんが、こちらで販売している幽霊子育飴には切なくも温かいストーリーが詰まっています。
夜な夜な飴を買いに来る女性。銭函(ぜにばこ)を見ると中には、しきみの葉(お墓にお供えする花)が入っており、不思議に思った店主は後をつけます。すると鳥辺野のある墓地の前ですーっと姿を消し、お墓の中からは赤ちゃんの泣き声が。お墓を掘り起こしてみると、中から飴をくわえた赤ん坊が出てきました。
女性は身篭ったまま亡くなり土葬。そのあとも赤ん坊は成長しお墓の中で誕生。しかし母乳を与えられない母親が幽霊となって我が子の為に飴を買いにやってきたと伝えられています。
そんな母親の深い愛から、「幽霊子育飴」と名付けられたこちらの飴。麦芽糖とザラメ糖のみを使用したシンプルなもの。光に当たると艶やかな琥珀色が輝きます。どこか懐かしいほんのり甘い幽霊子育飴。切なくも温かいストーリーと共に、京の土産におひとつ、いかがでしょうか?
お店のホームページ: http://kosodateame.com/ame/
来店時はお店前に一時的に自転車を停めさせていただきご購入ください。
KCTPより自転車で15〜20分ほど。更に一足伸ばせば清水寺へ🚲
語り手:かおる玉子